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【コラム4-8】社内外の関係者とのエンゲージメントを最適化するステークホルダーマネジメント

本コラムは、転換期を迎える現代のビジネスパーソンを対象に、「考える」をテーマにしたトピックを月ごとに提供しています。

今回のシリーズでは、プロジェクトマネジメントの手法を用いて業務実行の管理に焦点を当て、前回はコミュニケーションマネジメントについて、特に実行段階における手法を紹介しました。

前回の記事はこちら

【コラム4-7】コミュニケーションのマネジメント

今回はステークホルダーのマネジメントについて。実行段階の取り組みを中心にご紹介します。

主要ステークホルダーの特定と分析

ステークホルダーの特定と分析は、プロジェクトのスタート時だけでなく業務実行における各フェーズの開始時やプロジェクトや組織に変更があった際にも行われます。

ステークホルダーにはスポンサーなどプロジェクト初期にでも把握できる「直接的ステークホルダー」もいれば、実行段階で判明する「間接的ステークホルダー」もいます。社内外のステークホルダーをもれなく明確にすることは、プロジェクトへ協力を仰ぎトラブルを未然に防ぐために必要です。

ステークホルダーの分類ごとに関わり方を考える

「権力と関心度」「権力と関与度」「影響度と関与度」といった2軸による分析はステークホルダーの特定段階で行われる代表的なデータ表現のひとつです。

※本稿ではPMBOKに沿って「権力」と表記していますが、組織管理上の「権限」もしくは「権限を持った役割」と読み替えるとよいでしょう

例えば、都市開発における近隣住民は「権力は強くないが関心度が高いステークホルダー」です。権力によって直接プロジェクトに影響を与えることはないものの、関心がとても高くネガティブな感情を持った際には自治体などに働きかけてプロジェクトに影響を及ぼす可能性があります。

そういったステークホルダーにはプロジェクトの進捗や状況を必要なタイミングごとに公開し、情報開示を求められた際にはきちんと対応するのがトラブルを未然に防ぐと言えるでしょう。

一方で「権力は強いものの関心度が低いステークホルダー」は、例えば「役職は高いがプロジェクトや業務の結果から大きな影響を受けないと思っているポジションの人」です。関わる必要がないのであれば必要以上に関心をもってもらわないように管理します。しかし、他部署のリソースを借りる場合など「影響があるのに関心度が低い」場合は関心をもってもらえるように働きかける必要があります。

また当初は「権力が弱く、関心度や影響度も低いステークホルダー」であったとしても、状況によっては​​「権力は強くないが関心度が高いステークホルダー」や「権力は強くないが影響度が高いステークホルダー」へとなり得るため、積極的なアクションは起こさないものの動向に注目しておくことが必要です。

ステークホルダーのエンゲージメントを高める

プロジェクトや業務計画の段階でステークホルダーと適切な関係を築くためのマネジメント戦略をつくる必要がありますが、実行段階においては上記のように分類ごとに関わり方を考えながらコミュニケーションし、ステークホルダーのエンゲージメントを高めていきます。

具体的には、例えば適切なタイミングでステークホルダーをプロジェクトに関与させること。場合によっては臨時の会議をセッティングしたり非公式な場でコミュニケーションをとっておくなど様々な手段でステークホルダーの期待に応えます。

ステークホルダーとの関係に課題が見つかった場合は、その原因を探り対応しなくてはなりません。場合によっては計画時点では表立って現れなかった”隠れた要求事項”が見つかることもあり得るでしょう。

もちろん、社内人材やプロジェクトメンバーもまた重要なステークホルダーです。

経営層への報告や部署間やメンバーのモチベーションアップやコンフリクトマネジメントなど、コミュニケーションのマネジメントはステークホルダーのエンゲージメントを高めるためにも重要な業務と言えます。

例えばDXを推進するようなプロジェクトであれば、担当は情報システム部門であっても部署を横断しての変革が必要であったり、IT技術に詳しくない部署にも目的や意義をしっかり理解してもらった上で積極的に参画してもらう必要があります。もしエンゲージメントが低い状態であれば、せっかくのDX化も形だけの成果になってしまいかねません。

ステークホルダーとの協力でプロジェクトを成功へ導く

社内外の関係者からの支援を最大限に引き出し、抵抗を最小限にするためのステークホルダーマネジメント。合意形成など基本的なマネジメントスキルの他に、信頼関係の構築やコンフリクトの解決などコミュニケーションスキルも必要な要素です。

またどのように意思決定されたのかを明確に示したり、その場しのぎではなく長期の協力関係を考えることがステークホルダーとの良好な関係に役立つでしょう。時には利害が一致せず難航するかもしれませんが、プロジェクトの成功に欠かせないのがステークホルダーとの協力関係です。

次回は調達マネジメントについて、特に実行段階でのポイントをご紹介していきます。