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【コラム4-2】業務実行管理のためのスケジュールマネジメント

本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。

今シリーズではプロジェクトマネジメントの手法を用いて業務実行の管理を行うノウハウや手法をご紹介しています。

前回は「スコープマネジメント」について。「何をするのか、何をしないのか」を事前に明らかにするスコープマネジメントはプロジェクトの起点となる重要な要素です。

【コラム4-1】業務実行管理の第一歩 スコープマネジメント

今回はスケジュールマネジメントについて。特に実行段階でのコントロールについて役立つトピックをご紹介していきます。

スケジュール作成のプロセス

プロジェクトのスケジュール管理において、作成段階に必要なのは実行可能なタスクの生成を行うことです。

スケジュール作成時には多くのインプットが必要ですが、主には次の通りです。

  • アクティビティリストとアクティビティ属性
  • マイルストーンリスト
  • プロジェクトスケジュール・ネットワーク図
  • 資源要求事項と資源カレンダー

インプット後のスケジューリングでは達成すべき目標から逆算するのはもちろんのこと、計画と現実に解離や見通しの甘さがないよう「計画書の作成」「タスクの定義」「タスクの順序設定」「タスクの所要時間の見積もり」といったステップを経て作成されます。

スコープマネジメント段階で作成したWBSを活用して、メンバーごとの習熟度に応じた作業スピードの考慮なども行いつつスケジュール(日程計画)を作成しましょう。作成したスケジュールは各チームリーダーや有識者にレビューして、より実行可能な計画としてブラッシュアップします。

デルファイ法

専門的な知識や経験を持つ人々にアンケートを行い、得られた結果をフィードバックして他の参加者の意見を見てもらった後、再度同じテーマについて回答してもらうことで集団としての意見を収束させていく技法です。

デルファイ法はスケジュール作成だけでなく、各種作業の見積りやリスク識別など、さまざまな場面で活用できます。

スケジュールのコントロール

プロジェクトの実行段階で必要になるのが進捗管理とコントロールです。プロジェクト実行中に問題をいち早く察知し対策する必要があるのはもちろんですが、適切な分析手法を用いることで問題やコントロールの度合いを数値で表すことが可能になります。

ガントチャート

さまざまなプロジェクト現場で使われているスケジュール管理のツールです。プロジェクトにおけるすべてのタスクや、工数、スケジュールを管理し、さらにメンバー全体で進捗状況を可視化できます。

縦軸にタスクや工程、横軸に時間軸をチャートで示すことで、ひと目で直感的に全体像を掴めるというメリットもあります。

アーンドバリュー分析(EVM)

EVM(Earned Value Management)はスケジュールのコントロールに使われ、以下のような4つの要素から特定の時点での進捗状況や予想される問題を把握する手法のひとつです。

  • BAC(Budget At Completion):完成時点での総予算
  • PV (Planned Value):計画に予想されたコストの合計
  • EV (Earned Value):特定の時点までに達成された出来高の合計
  • AC (Actual Cost):特定の時点までに投入された実際のコストの合計

EVMは「あとどのくらいの日数がかかるか?」といった時間的な指標だけでなく、人件費や工数といったコストでプロジェクトを客観的かつ定量的に管理しようという手法です。

プロジェクトに遅延が起こったら?

スケジュールの進捗に問題がある場合、具体的なコントロール手法には以下のようなものがあります。

クラッシング:人員や作業時間などリソースを追加する
ファストトラッキング:後続のタスクを現在のタスクと並行する

クラッシングではコストが増加し、ファストトラッキングは新しいリソースは必要ありませんが手戻りによる負担が起こるリスクがあります。

コストに余裕のあるプロジェクトであればクラッシングによるスケジュールの調整も候補にできるでしょう。しかし、クラッシングは全体の納期を大きく左右するクリティカルパス上にあるタスクに対して実行しないと効果が薄くなってしまいます。

クリティカルパスが明らかであれば、計画段階でクラッシングやファストトラッキングの手法を用いて計画段階でのスケジュール短縮を検討することもできますが、計画段階ではクリティカルパスもあくまで予測であり、実際のクリティカルパスと異なる可能性にも留意します。

次回は計画通りにプロジェクトを進めるために重要なタスク管理について、引き続き考えていきます。