本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回は、分析思考と創造思考についてご紹介しました。
ラムズフェルドのフレームワークとは?
2002年2月。当時の米ラムズフェルド国防長官による発言が話題となりました。
“Reports that say something hasn’t happened are always interesting to me, because as we know, there are known knowns; there are things we know we know. We also know there are known unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns – the ones we don’t know we don’t know.”
「何かがなかったという報告は、いつ聞いても面白い。知ってのとおり、知られていると知られていること、つまり知っていると知っていることがあるからだ。知られていないと知られていることがあることも我々は知っている。言ってみれば、我々は知らない何かがあるということを知っている。しかし、知られていないと知られていないこと、つまり、我々が知らないと知らないこともある」
政治的な解釈はともかくとして、この不確実性の種類を分類した考え方はリスク管理のフレームワークとして活用されています。
実はこのラムズフェルドのフレームワークは、リスク管理だけでなく “企業におけるナレッジ管理のヒント” としても活用でき、企業がイノベーションを生み出す取組みの助けとなります。
これにはフレームワークに「+1」の定義が必要で、シンキングパートナーズがコンサルティングにおいて独自に提唱していることのひとつです。
今回はまず基本的なラムズフェルドのフレームワークについて、続いてその発展的な活用についてご紹介していきます。
ラムズフェルドのフレームワークが示すのは、我々が「知らないこと・わからない」と思うことに種類があるということです。
もしもあなたがパソコンの不調を感じた時、これまで経験したトラブルや原因が予想できることであれば、問題なく対応することができるでしょう。これは既知の既知(known knowns)、もうすでに経験していることや知っていることの領域です。
いつ起こるかはわからないにしろ、パソコンの作業データは定期的に保存しないと何かが起こった時に消失してしいまう……何が起こるかわからないことを知っている、これは既知の未知( known unknowns)と呼ばれる領域です。
それでは、こういうケースはどうでしょうか。突然ブルースクリーンになってPCが立ち上がらなくなった! パニックになり、どうしていいのかもわからない……例え周囲の誰かは知っていても、自分が知らないことを知らないという領域、これが未知の未知(unknown unknowns)です。
リスク管理においては、様々な要因を未知の未知から既知の未知へ、さらに既知の既知へと落とし込むためにラムズフェルドのフレームワークが活用されます。
先ほどの例は一個人におけるリスク管理の例でしたが、視点を組織全体へ広げ、ここにシンキングパートナーズが提案する「+1」の定義を加えることで、より発展的なフレームワークとして活用できます。
その定義とは、未知の未知よりもさらに外側「誰も存在すら知らない、未開の技術/サービス」をも考える対象とすること。
まさにこの「+1」の「誰も知らない」領域を考えることが、イノベーションを生み出す「世界にまだ全く何も無いものを創造する思考」なのです。
次回はこの「全く何も無いものを創造する思考」について事例を交えながらご紹介します。
ピンバック:【コラム(5)】全く何も無いものを創造する思考とは – シンキングパートナーズ合同会社